戸建ての契約当日、僕は恐怖に襲われていた。
・本当にこれで良かったのか。
・結局、業者に言い込まれたのではないか。
いろいろな不安が錯綜する。待ち合わせ時間は2時間後。
正直、業者さんに電話をしてドタキャンをしようと思った。
しかし業者さんの強気な姿勢から、思いとどまり契約に向かうことに。
覚悟を決めることが出来た。
そして決済日、集合場所は業者さんの事務所ではなく、銀行の一室。
最初は違和感があったが、送金があるため銀行の一室を借りて手続きが行われるそうだ。
売り主、司法書士、仲介業者さんの3者への手土産を持って銀行を訪れた。
実は内心、指値交渉になかなか応じてくれなかった売り主さんに嫌味の一つでも言おうと肩を張っていた。
しかし、席には普通の老夫婦が座っていた。
そしていつの間に物件の思い出話に花が咲く。
・ご主人様が他県にいた頃に友人にお願いして競売でこの物件を手に入れてもらったこと。
・庭の木の落ち葉がすごくて毎年剪定に行っていたこと、しかし最終的には切ることになったこと。
など普通のおじいちゃん、おばあちゃんが普通に管理していたことが分かった。
尖った僕の心が一気に緩んでいく。
「大切に引き継がせていただきます。」
こうして僕らは、初めて大家になった。
管理は管理会社にお願いせず自分で行う「自主管理」ですることにした。
師匠のメガ大家に相談したところ、管理料を払うのがもったいないし、自主管理することで不動産賃貸業に関わる経験をし、将来、管理会社に委託した時に正しい判断ができるようになるとよいとアドバイスを受けた。
前の大家さんも自主管理。
入居者さんは慣れていたのだろう。
不覚にも入居者さんの方からあいさつの電話が来た。
妻は大家としてどう対応すればよいか全く分からなかったようだが、とりあえず家賃の送金口座と送金日を確認したそうだ。
そうして、平成30年6月25日(月)
初めての入金
「おー」
きっちり約束した日にお金が振り込まれていた。
妻と通帳を見つめる…。
でも正直、どこかの体験記で聞いたような感動はなかった。
「ここからいくら返済して、いくら余って、それが何ヶ月貯まったら固定資産税を払える。」
そんな計算が始まっていたからだ。
いつの間にか僕らは経営者になっていた。
「収入-支出=プラス」
単純な足し算引き算の原則を死守したいと強く願った。
【追記】
地方の戸建て(1戸4DK、駐車場1台)を購入するのにかかった費用
物件価格490万円
諸費用43.4万円
・固定資産清算金1.5万
・仲介手数料22万
・登記費用13.5万
・火災保険6.4万円(5年)
家賃日割り分、敷金の移行23万円
融資490万円
自己資金20.4万円
…続く…
第11話「最初の脱落者」
writer.頑張る投資家YUKI
(不動産投資歴2年、メガ大家の教えを実践中)